II-VI族希薄磁性半導体ナノ構造の形成とデバイス応用

希薄磁性(微量な磁性元素を含んだ)半導体を用いて電子が持つ電荷とスピンの両方を工学的に利用する『スピントロニクス』の実現を目指します。セレン化亜鉛(ZnSe)を用いた希薄磁性半導体ナノ構造においては、スピン効果と励起子効果が顕著に現れます。これらの性質を利用した新しい原理の信号伝送を実現するデバイスの開発に取り組んでいます。

本研究の特徴は、分子線エピタキシ(MBE)選択成長法により、図1に示すような量子集積回路の基本構造を一度に大面積に形成する点にあります。

この手法は、リソグラフィー技術と化学エッチングによって微細な立体加工を施した半導体基板上へ、高純度な原料を分子(原子)線状に照射することにより、図2に示すような原子レベルの構造を自己組織化する方法で、従来のプロセスにおいて問題となっていたランダムにしか形成できないナノ構造の位置制御に関する弱点を克服することが可能になります。

本研究では、この手法をさらに発展させ、単に微細な構造を形成するだけでなく、あらかじめ基板上でこれらの構造を有機的に連結させたパターンを設計することでネットワーク状の回路を構築し、新たな集積光電子デバイスへ応用することを目標としています。

本研究を遂行することで、高品質なナノ構造の自己組織化プロセスが確立されれば、結晶工学などの基礎学問分野への貢献はもとより、半導体電子デバイス・光デバイス工学といった応用工学分野への多大な貢献が期待できます。また、正確な位置およびサイズ制御性から、従来から使用されてきた信頼性の高い素子・回路設計技術の適用が可能となるため、他のナノ構造作製手法に比べ生産プロセスとしての拡張性に優れています。本研究は、量子効果デバイスによる新たな集積回路の実現に向けて独創的な手法で取り組むものであり、研究達成時には、次世代情報技術を取り巻く関連分野へ大きな波及効果が期待できます。